『さよなら』から始めよう
水割りの焼酎が
甘さを増し
飲み掛けのグラスを
テーブルに置いた高野が
封切をする
「徳子と別れたんだろ」
今更 解りきった答えに
苦笑しかない
「一ヶ月前かな」
時が経つのは
早いモノだが
日にちを追って加算している間は
毎日が別れ話を切り出された日の
翌朝を辿る
「結婚するらしいぞ」
無様にも俺は
飲み掛けたグラスの手が
止まり
「やっぱ知らんかったか」
高野の言葉は
飲み込んだ酒を
喉越しの悪い味に変えた