『さよなら』から始めよう
高野の投げ捨てた煙草が
小さな火花を放ち
灰皿に弾かれ
「妊娠四ヶ月だそうだ」
怒りを露に
燃えたままの煙草が
テーブルを転がる
「産むらしい」
冷静な高野の威嚇が
鋭い矢の如く
胸に突き刺さる
妊娠4ヶ月の意味は
無言の攻撃
”お前の子供じゃないのか?”
妊娠を承知で結婚するのか
その男の子供なのか
曖昧な状況の中
たったひとつ
確信している事は
徳子が選んだ男は
俺ではない
その事実しか
真実ではない