Happy birthday
キュッキュッと上履きのゴムと床が擦れる音が響く。
その音は、彼の席まで届くと思ったけど……
私の前で止まった音と、私に被さる影で、ハッと前を見る。
今この瞬間、間違いなく私の目の前に立つ透真。
その目はジッと見下ろしていて、
あり得ないくらい高鳴る胸と、あり得ないくらい熱くなる頬。
「………あ…あのっ」
勇気を出して上げた声は、少し震えて弱々しかった。
その声は、透真がスケッチブックを開く音で消される。
不思議に思いながらジッとスケッチブックを見ていると、
透真は開るページを開くと、その紙をビリッと綺麗に破り取った。
ちらっと見た彼の顔は、彫刻作品かと思うくらい綺麗な顔に夕日が照らされて、いやらしさの無い艶やかな顔になる。