Happy birthday
冷たい風がブワッと吹き抜けた。
寒いはずなのに、私の身体は…心は…
真夏のようにポカポカしている。
「雛子……好きだよ」
耳に届くその声を発したのは、
一年近く見ている彼で。
でも目に映る透真の顔がぼやけているのは、私が流している嬉し涙のせい。
「涙…」
呟いた透真は、カバンから包みを取り出す。
淡い淡いピンク色。
その包みを開けると、中から出てきたのは、白い生地に薄いピンク色で刺繍がされた綺麗なハンカチ。
その薄いピンクが桜だと気づいたのは、ハンカチが目元に近付いた時だった。
「折角役に立つとは思わなかった…徹夜で刺繍して良かった…」
市販かと思ったら、どうやら透真の手作りらしい。
裁縫にも興味があったとは知らなかった。
きっと目を活き活きさせて作ったんだろう。