心の灯り―キミがいてくれたから―

バスに乗って駅前に着く。


待ち合わせは駅前のシンボル的な時計塔の前。


ここは待ち合わせのスポットだから人がいっぱいいる。


ぐるりと見渡して陽人がいないことを確認した。


時計塔の前のベンチに座って、鏡を見ながら髪型を直してると、


「澪」


と頭の上から声が聞こえた。


アウトドアっぽいパーカーに少し緩めのジーンズを履いた陽人がいる。


鏡見てるなんて恥ずかしいところを見られたな・・・。


中学に入ってからの陽人の私服は初めて。


当たり前だけど小学校時代よりずっとオシャレになってる。


「待たせた?」


ポケットに手を突っ込んだまま陽人がちょっとぶっきらぼうに言った。


「ううん!あたしも今来たところだよ!」


「あ・・・そう。じゃぁ行こうか」


陽人はあたしをほとんど見ることなくさっさと歩きだす。


慌てて後を追いかける。


まぁ「可愛い」なんて言われるとは思わないけど・・・


やっぱりデートって陽人は恥ずかしいのかな?


ちょっと気合い入れてきたから、「いつもと違うね」って言ってほしかったのにな・・・。


でも、今日のあたしは張り切っちゃうもんね!


プリクラに「初デート」とか書いちゃおうかな?


手とか繋げたらいいなぁ・・・。


でも陽人の手はポケットの中。


せっかくデート出来たんだからそこまで贅沢は言えないか。


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