心の灯り―キミがいてくれたから―
「俺の家は『共働き』だから、母ちゃんくるの遅いんだ」
共働きってなんだろう?
男の子も意味がわかってなさそうだ。
「お前、名前なんていうの?」
あたしの隣にしゃがんでこっちを見る。
「桜井 澪」
「ふーん。俺、斉藤 陽人(さいとう はると)」
「陽人?」
「そ、よろしくな。澪」
男の子に小学校に入ってから初めて名前で呼ばれた。
なんか恥ずかしい・・・。
「澪、寒いから職員室いこうぜ」
立ち上がって、あたしの腕をつかむ。
「え!?」
「遅いやつの特権があるんだよ」
陽人はニヤリと笑う。
「と、特権ってなに?」
「・・・特別?よくわかんね」
よくわからないまま、陽人に引きずられるように職員室に入る。
職員室はあったかくてほっとする。
「先生ー?いつもの!!俺と澪二人分!!」
いつもの??
先生が少し笑ってから奥の部屋に消えた。