voice
「かおりちゃーん、帰ってきたよー。」
深い眠りに落ち始めた、夜中・・・いや早朝4時頃。
酔っ払って気分上々の樹が、私の家にやってきた。
「ここは、樹の家じゃないよ。」
眠さで目をこすりながら、そう言って樹を見ると、
樹の頬には、いくつかの口紅の跡がついている。
「かおりちゃん、大好きよー好きよー大好きよー。」
酔っ払ったときだけ、気持ちを伝えてくる樹。
口紅をつけたままのその言葉に、重みを感じられないし、
きっと、奴は明日になったら覚えていないだろうし、
嫉妬したってことはきっと奴のことをまだ
自分は好きなんだろうって思うし、
いろいろと複雑な感情が自分の中を駆け巡る。
「私は樹が大嫌いだよ!」
張り上げた声はむなしく、樹はすでにご就寝だった。