voice





翌日、まだ寝ぼけている樹を置いて、学校へ行く。

「今日朝から講義だよー。」
よう声を一応かけてみたが、帰ってきた返事は案の定。

「今日はきついから、休む。」


学生の本分は、勉強だよ。
なんて心に思っていても、言わない。

樹にそんなことを言ったところできっと
「大学生は遊んでなんぼじゃ」
と意味不明な言葉が返ってくるだけだろう。



「あれー山下君は?」
教室に入ると、すでに座っていた河野麻美が声をかけてきた。

「あー麻美おはよう。」

理系には女子が少ない。
端っこに集まった女子の輪に入って行こうとする。


「おい。樹は?」
樹の友達、渡部太郎。

「知らん。」


樹と付き合ってから、ことあるごとに、樹の所在を聞かれる。

『あいついまどこいる?』
『今日何してる?』

本人に聞け!って何度も言うが、

『お前に聞いたほうが早いじゃん。』

と返ってくる。

樹は、飲むことが好きで、昼間は家で寝ている。
飲んでる間も、寝ている間も連絡とれないから、私に聞いたほうが早いということなのだそうだけど。

納得いかない。



なんとなく、一緒にいることが当たり前になって、
流れで付き合うってことになったけど、

たぶん、好きなんだろうけど


最近は嫉妬している癖に、自信がない。


私は、樹をちゃんと好きなのだろうか?
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