恋スル乙女。



「…あ、わたしそろそろ帰るね。
寄るところあるから、二人はゆっくりしてって」


そう言うと、美緒が立ち上がった。

じゃあね、と自分のトレーを持って帰って行く美緒。


「栗崎、用あるなら先に言ってくれればよかったのにな」

「そうだよね…」


美緒はわざわざ予定があったら、ドーナツ屋なんて寄らないで帰っちゃう。

本当は用事なんてないと思う。

きっと…

わたしと椎名くんを二人きりにさせてくれた、美緒の気遣い。


「ヒナさ」

「うん」


心の中で美緒に感謝していたら、ふと椎名くんに名前を呼ばれた。


「あの、さ…」


なんだか少し落ち着かないような様子の椎名くん。

いつもとちょっとだけ、違う。


「ヒナは栗崎と、恋ばなとかすんの?」

「え…っ!?」


危なく持っていたドーナツを落としそうになった。


な、ななな、なんで…!

もしかして…

わたしの気持ち、ばれてる!?


「あ、ほら、その…」

「う、うんっ」


え、これって、もしや…

わたし、告白した方がいいの…?

せっかくの二人きり、しかも、恋の話なんて…

もはやそういう流れとしか思えないよ!


「あの、椎名くんっ」

「あのさ」



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