恋スル乙女。
「あ、うん!美緒、ありがとね!」
「そっか、それならよかった」
美緒が安心したように笑った。
椎名くんと美緒。
2人ともわたしの大事な友達だもん。
このままで十分だよ。
きっと。
「ねえねえ、ヒナ。
あの席って例の転校生の席かな?」
美緒が指差したのは、窓側の一番後ろの席。
全然気付かなかった。
って言うか、あそこって…
「美緒の後ろ?」
「そうそう。
朝来たら机増えててびっくりしちゃったよ」
ふぅーん。
あの人、本当に転校生なんだ。
椎名くんのことで、土日はすっかり忘れていた転校生の話。
「ねえねえ、ヒナは会ったんでしょ?
どんな人だったの?」
「前言った通りだよ」
「もう、それじゃ分からないよ」
「強いて言うなら…こわい人」
「なにそれ」
「そのままだよ」
そして、チャイムが鳴ると同時に椎名くんが教室に駆け込んで来た。