童歌
「夕飯は何にしようかしら」
車を走らせながら、夕飯の献立に考えを巡らせる。
いつも行くスーパーまでは徒歩で15分程度なのだが、身重になってからは旦那の車を借りていた。
「挽き肉が安かったし……ハンバーグにしようかしら」
この角を曲がれば、すぐにスーパーの看板が見えてくる。
入り口に近い駐車スペースが空いていた。バックミラーを覗き込みながらハンドルをきる。
あともう一息ーーと、ミラーを見ると人の姿が映った。
「きゃっ……!」
慌ててブレーキを踏み込みミラーを見るーーが、人の姿はない。
「え、うそ……」
ひいてしまったのでは!?ーーと、車の後ろに回るが、やはり人の姿はない。
「私ったら、疲れてるのかしら……」
よりによって、自分と同じ妊婦の幻覚を見るなんてーー