ひだまりHoney
助けてもらったからと言って、この人はいい人なのだと決めつけ、すぐに気を許しては、駄目。
私は下を向いて、そっとため息を吐いた。
「気持ちは分かるけど」
苦々しさを交えた声が、頭上から降ってきた。
「ちゃんと顔を上げて歩きなよ、平加戸さん」
「はい……ん?」
顔を上げて歩きなよ、平加戸さん?
ひっ、平加戸さん!?
ハッとし顔を上げた時にはもう、彼の姿は閉まる扉の向こうにあった。
「……なんで私の名前を……こ、怖っ」
両腕がゾワリと粟立つのを感じ、私、平加戸珠洲(ひらかど すず)は自分で自分を抱きしめたのだった。