ひだまりHoney
泣きそうな顔で残業仲間に入らないかと聞いてきた、桃宮さん。
作業してく? と、聞いてきた紺野さん。
一時間だけと言っていた女の人たち。
私が積み上げた、パンフレットの入った茶色の包み紙。
それらがグルグルと脳裏を巡り、駅に向かう速度が徐々に落ちていく。
立ち止まってしまえば、ぐっとお腹が鳴った。
きっとみんなもお腹が減ってるだろうな……なんて考え、私はまたビルを振り返り見た。
いくら遅くなっても、今日の弟はあてにできない。しちゃいけない。
だから早く帰らなくてはいけないのに……どこからか、声が聞こえた。
――……いざとなれば、タクシーという最終手段があるよ。
その囁き声は、紺野さんの声音に似ていた。