ひだまりHoney
「アイツ、声でかいんだよ」
「……そうですね」
松戸さんの迷惑発言のせいで、見知らぬ人たちがクスクスと笑う声が聞こえた。
「行くか。ちょっと早歩きで」
「……そうですね」
歩き出した彼を、私は急ぎ足で追いかけた。
更に速度を上げ紺野さんの隣に並ぶと、私は自分と紺野さんの間にある隙間へ目を向けた。
まるで間に誰かが二人いるかのように、私たちは離れている。
私にとって丁度良いと思えるのは、この距離なのだ。
社の中で、紺野さんだけがそれを見抜いていて、ちゃんと距離を置いてくれる。
俯いたまま私は唇を引き結び、もう一歩だけ、紺野さんとの距離を詰めた。
「平気?」
頭上から驚きに満ちた声音が振ってきた。
「……はい。大丈夫みたいです」
「まぁ、夜だし。つかず離れずで、行きますか」