ひだまりHoney
紺野さんのつま先が戸惑っているように見えたけれど、顔をあげれば、彼は笑みを浮かべ、歩くペースを落としてくれた。
携帯の着信音が夜気の中で振動する。紺野さんは自然な動作でそれを取り出した。
でもすぐに携帯は元の場所に戻っていく。
メールを送ってきた主を確認し、それで終わりのようだ。
「返信しないんですか?」
「いいよ。誰かといるときはしない。急ぎの用件じゃない限り」
ふふっと笑ってから、紺野さんは両手を頭の後ろで組んだ。
「ところで……ラーメンどうだった? 不味かった?」
「いえ、美味しかったです」
「よかった。無理やり付き合わせといて不味かったらどうしようかと……でも、そうだったなら一安心」
安堵のため息と共に告げられた言葉に、笑いが込み上げてくる。
「お腹いっぱいすぎて、家に帰ってもすぐに寝られなさそうですけど」
「俺も」