ひだまりHoney
夜道を歩いているとは思えないくらい、私は穏やかに笑っていた。
紺野さんの傍に寄ってみて、気がついた。
さっき店先で、酔っ払いが恐くて紺野さんの影に隠れたとき、互いの距離はこれ以上に近かったかもしれない。
さっきだってそうだ。
紺野さんの言葉は自分の恐怖心を和らげてくれるはずと、そんな風に思ったのだ。
私は彼を頼っている。信じてみたいとも思っている。
だから近寄ってみても、体が酷い拒絶反応を起こさないのだ。
でも……果たして、それで良いのだろうか。
もし、紺野さんの恐い一面を見てしまったら……。
元カレの顔を思い出し、私はぶるりと身を震わせた。
横断歩道の青信号が、点滅を始める。私たちは揃って足を止めた。
小道から出てきたタクシーが軽やかなエンジン音を響かせながら、交差点に進入し右折する。程なくしてテールランプが赤く灯った。