ひだまりHoney
紺野さんは、もともと自分たちが向かっていた方向を指さした。
「良いからこっち」
横断歩道を渡る人たちは点滅し始めた信号を見て、小走りになっている。
どうしよう……頭ではそう思っていたけれど、紺野さんの動き出した足を見て、私は彼を追うように歩き出していた。
「……明日も仕事ですよ? 本当に良いんですか?」
「任せとけって、もう話はついてるから」
「話?」
紺野さんがいつもの調子でふふっと笑う。
信じて良かったのだろうかと、そんな疑問がわき上がってくる。
信号を三つ分歩くと、紺野さんはガードレールに腰掛けた。
「少々お待ち下さい」
「はぁ……」
心細くなって辺りを見回した。まだ同じ大通りに沿いにいるので、車の明かりも、人もまだある。