ひだまりHoney

「そっちで勘違いされるのは、もっと嫌だな」

本気の嫌そうな顔に、笑いを必死にかみ殺したけれど、堪えきれなかった。

「笑いすぎだろ」

ひとしきり笑った後、自分を見ている紺野さんに気がついた。

その眼差しは、とても優しくて、温かなものだった。

気恥ずかしなって、紺野さんに背を向け――……私は叫び声を上げた。

ラーメン屋の前で見たあの酔っ払いのおじさんが、千鳥足で目の前を通り過ぎようとしていたからだ。

視点の定まっていないような瞳が、固まった私に向けられる。

そのまま通り過ぎるのを、強く願った。

「おねーちゃーん」

しかし酔っ払いは、にやつきながら、一歩、二歩、三歩と迫ってくる。

< 135 / 447 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop