ひだまりHoney
私の隣のデスクに座っている木村さんが手を上げ、大田原さんへ挑むような視線を向ける。
見慣れていたはずの木村さんの姿が、少しだけ輝いて見えた。
「できるだけ配慮はしますが、帰りが遅くなることも今より多くなると思います。大丈夫ですか?」
「はい……少しくらいなら」
ちょっとだけ羨ましいなと思っていた気持ちが、急速にしぼんでいく。
興味はあるけれど、帰りが遅くなってしまうのは……正直、怖い。
定時で終わって帰るくらいの時間ならば、女性専用車両もあるし、人目も多い。酔っ払いに絡まれそうになる事もそうそうない。
私は諦めの気持ちを込めてスタートボタンを押す。
排出されていく紙を、ただじっと見下ろした。