ひだまりHoney
通路の奥の方で、誰かが蹲っているのが見えた。
どうしたのだろうと、目を細めた。でもよく見えなかった。
道ばたなら絶対に近寄らないところだけれど、ここは今現在、関係者以外立ち入り禁止の場所だ。変態である確率は低い。
私は大きな塊に向かって歩き始めた。
重そうな棚がずれていた。どうやらこれに身体のどこかをぶつけてしまったのだろう。
「だ、大丈夫ですか?」
声をかけた瞬間、肩に衝撃が走った。相手が勢いよく立ち上がって、私とぶつかったのだ。
「あっ!」
持っていた名刺が、指先からひらりと落ちていく。
「あーくそ! あっちもこっちもいてぇな」
「うっ」
衝突してしまった相手を見上げて、私は息をのんだ。
熊男だった。
すぐさま、来なければ良かったと後悔する。