ひだまりHoney
「痛ぇな」
目が据わったのを見て取って、私は息を詰めた。
男が大きく手を振り上げた。
身構えた瞬間、頬に痛みが走った。
痛かった。
痛かったけれど、屈したくなかった。
紺野さんの名刺を破ったこの人だけには、絶対に。
睨むように視線を向ければ、男が舌打ちした。
そしてまた手が上がっていく。しかも拳を握り締めた。
私は歯を食いしばった。
「おい、うちの社員に何してんだよ」
男の眉がぴくり反応した。
振りかぶった手首を、違う手が掴み上げている。
「……紺野さん」
冷ややかな瞳で熊男を見下ろす紺野さんと、苛立ちの表情を紺野さんに向ける熊男。
その二人を小さな明かりが撫でていく。