ひだまりHoney

「ありゃ。喧嘩ですか?」

年配の警備員が、熊男に懐中電灯の光をあてている。薄暗い中で苦渋に満ちた顔をしているのが見えた。

「すみません。照明を付けて頂けますか」
「はい、分かりました」

紺野さんが緊張感のこもった声で、警備員に要求する。

警備員がすぐに行動に移行すれば、熊男は紺野さんの手を振り払って、立ち上がった。

「この女が、折角仕上げたディスプレイを壊しているのを見つけてしまってね、ついカッとなって」
「……彼女がそんなことを?」
「とりあえず、上司共々、謝ってもらえますか?」

平気で嘘をついて、さも当然だと言うように謝罪を要求する。

この人はきっと紺野さんに土下座でもさせるつもりだろう。

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