ひだまりHoney
「何言ってんだよ。お前一人置いてく訳にいかないだろ」
「……でも」
「今、どっちの仕事を優先すべきかくらい、わかるって」
「仕事って……彼女との食事はプライベートじゃないんですか?」
目の前の折れ曲がった物体を確認していた紺野さんが、勢いよく私を見た。
「何の話だよ。俺はこのまま社に戻って晃の手伝いでもしようかと――……」
「さっき腕を組んでた女性と食事に行くん……」
紺野さんの手が頬に触れる。私は口をつぐんだ。
熊男に叩かれた口の端を、そっと指先がなぞった。
ぴりっと痛みが走って、目に涙が浮かぶ。
「良いか、平加戸。アイツも変態の仲間だと思え」
「変態ですか?」
「そう。つまり、もう近寄るなってこと」
顔色を変えた紺野さんに、私は「はい」と答えるしかなかった。