ひだまりHoney
係長が喚き出すと、紺野さんは私から体を離した。
「上田さんじゃ……珠洲のこと幸せに出来ない」
「なんだって!?」
「だから、諦めてください」
「紺野、貴様! 横から奪っといて、よくそんなこと言えるな!」
すぐそこに、真剣な顔があった。
「俺が彼女を幸せにします」
真っ直ぐな言葉と表情に、視界が揺れた。
「振り」なんだと分かっている。
けど、それでも良かった。
この瞬間だけは、「紺野さんの彼女」でいたかった。
紺野さんの胸元に顔を埋めれば、大きな手が優しく頭を撫でてくれた。
「このバカ女め!」
係長は駅前に路駐してあった車へと走り寄っていく。
それに荒々しく飛び乗ると、タイヤを鳴り響かせながら急発進した。