ひだまりHoney
「でも、ここの社長の名前って大田原でしたっけ?」
社長はあまり見ないけれど、顔はもちろん知っている。
渋くて、固い感じ。紋付き袴が似合いそうな年配の男の人だ。
あまり大田原さんのイメージに繋がらない。
「社長の名字は、確か漆原(うるしばら)だったよね。親が離婚して名字は違うけど、父親なんだって聞いたよ」
「そうなんですか」
と言うことは、紺野さんの叔父さんでもあるのだろうか。
ペットボトルの飲み口を唇に付けた状態で考えていると、美都里さんが盛大なため息をついた。
「あーぁ。やっぱり大田原さんって、私には手が届かない人なんだな」
「美都里さん」
とても寂しそうに美都里さんが笑った。
初めて見た表情に、私はかける言葉が見付けられなかった。