ひだまりHoney
肩越しに振り返り見れば、大田原さんが扉の小窓から室内を覗き込んでいた。私もつられて頭を下げた。
爽やかな笑みを浮かべ手を振っていた彼の姿が消えると、先ほどよりも静かな声で美都里さんは話し出した。
「ここに派遣されて、また大田原さんと出会えて、こんな風に接してもらえて……これって凄いことなんじゃないかなって思ったの。自分に素直になって、もう一度忘れかけてた気持ちを取り戻してみても良いんじゃないかって」
そこまで言って、雑誌をぱたりと閉じ、美都里さんは俯いてしまう。
「出会えた奇跡に自信を持とうかなって、そう思ってた矢先、見合いの話とか聞いちゃうし。参ったなぁ」
「美都里さん」
お見合いがなんだ! 大田原さんが気に入るとは限らないのだし、突き進んでしまえ!
……と言うのも、無責任すぎる気がするし、