ひだまりHoney
上から目線で、美都里さんがわざとらしくそんなことを言う。
口元に付いたお茶の雫を指先で拭ったあと、私は項垂れるように、大きく頷いた。
「ごめんなさい。嘘をつきました……気になります」
「紺野さんの事、好きなの?」
「……好き。なんだと思います」
美都里さんが笑みを浮かべた。なんだかちょっとだけ得意げだ。
「しょうがないから教えてあげる。あのね、松戸さんから聞いたんだけど。紺野さんに女の影がちらつくと、でるらしいわよ」
「でる?」
「貞子が」
声を潜めた瞬間、きーーっと扉の開く音が響き渡った。美都里さんが短い悲鳴を上げる。
中途半端に開いている扉に目をこらせば、その向こうで影が動いた。