ひだまりHoney
「仕事でも疲れているのに、断るのにもまた更に疲れました。どうして女性はあんな強引に事を進めたがるのでしょうか。あっいえ、お二人はそういうタイプではありませんね」
「失礼しました」と囁かれ、美都里さんと私は首を小刻みに振った。
ため息を一つはさんで、大田原さんの言葉は続く。
「疲労困憊で帰宅すれば、今度は晴暉から連絡が……家の近くのファミリーレストランに呼び出されまして、行きましたらそこには希世(きよ)さんもいて」
希世さん……と、私は心の中で繰り返していた。
あの夜、帰りの電車で、紺野さんは上の空だった。
もちろん、話しかければ穏やかな笑みを私に向けてくれたけれど、話が途切れれば、彼の目は窓の外へと向いてしまう。