ひだまりHoney
慌てて名刺を持つ手を胸元に引き寄せれば、紺野さんが困ったように笑った。
「あの時と、同じ顔してる」
「どの時ですか!?」
「熊男に、刃向かってた時だよ」
その笑みはだんだん優しさを帯びていく。
「それ、アイツが破いたんだな……頼むからさ、そんなに必死になんなよ」
紺野さんは胸ポケットから名刺入れを取り出し、そこから一枚取り出した。
また交換しろと言われるのだろうかと予想し、名刺を力一杯掴んだ。
「今度の日曜日、暇?」
「え!?……いえ、予定はありませんけど」
「だったら、見に来る?」
しかし、交換するためのものかと思っていた名刺は、紺野さんの指先によってひっくり返される。
次いで手帳とペンも取り出し、真っ白なそこへと紺野さんは何かを書き写し始めた。