ひだまりHoney
「あぁ、悪い。今行く……それじゃあ」
紺野さんの声に顔を上げれば、自分の周りの人たちに笑いかける姿が見えた。
そして私に顔を向ける。
「紺野さん……っ!」
去って行く大田原さん達につられるように、勇弥君の視線がこちらへ移動しているのに気がついて、私は踵を返した。
「姉ちゃん。あの男と友達だなんて、紺野ってヤツ、本当に大丈夫か?」
そんなこと言われたって、分からない。今は何も考えられない。
「……もう、行くね。凉太も頑張って」
「うん」
とにかくこの場を離れたくて、私は弟から手を離し、観客席へと歩き出した。
角を曲がり、自然の光を求めるように進んでいく。
外に出て、私は深呼吸をした。