ひだまりHoney
鞄を膝の上に置いて財布を出そうとすれば、大田原さんが鞄に手をかざした。
「直ぐ戻ってきますので、隣を空けておいて下さいね」
「……すみません」
遠ざかっていく大田原さんの背中をじっと見つめてしまう。
聞きたいことがある。山ほどある。
あの女性が、希世さんなのか。
彼女も、紺野さんが呼んだのだろうか。
いつもあんな風に、腕に触れたり組んだりしているのだろうか。
元カレと紺野さんは、ただのサッカー仲間なのか。
私と勇弥君が付き合っていたことを知っていたのだろうか。
知っていて、私を誘ったのだろうか。
大田原さんが消えた出入り口から、女性が現れた。
あの髪の長い女性だ。
彼女はぐるりと辺りを見回し、視線を止めた。
私で止めた。
その瞳の強さに、体が沈みそうになる。
嫌な汗が、背中を流れ落ちていった。