ひだまりHoney

鬼のような迫力に、つい「弟に」という台詞が口を突いて出ようとする。

言ってしまえば……そこで、希世さんからの厳しい視線と追求から逃げることが出来ると思った。

でも私は、それを思いとどまっていた。

なんで嘘を吐かなくてはいけないのだと。

「紺野さんです。紺野さんに誘われて、観戦しに来ました」
「……晴暉に誘われたの? 来てって?」
「言われました」

誘われて嬉しかった自分の気持ちにまで、嘘という蓋を被せたくない。

「晴暉に好かれてるとか、勘違いしないでよね! 晴暉は誰にでも優しいの! 貴方にだけじゃない!」

希世さんの目立つ声が、店内に響き渡った。

店の中の時間が僅かに停止した気がした。

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