ひだまりHoney
勇気を振り絞って、一歩踏み出した。しかし、私の動きを察知し、希世さんも動き出す。
紺野さんの横に並ぶと、そっと彼の服を掴んだ。
掴まれた服に視線を落としてから、紺野さんは希世さんに何かを話し掛け顔を上げた。
紺野さんと目が合った。
組んでいた腕を解き、また希世さんに言葉をかけた彼を見て、私の足は止まってしまった。
これ以上行っては駄目な気がした。
希世さんの彼氏としての紺野さんを見せられる気がして、恐かった。
逃げ出したい。
「お疲れ様でした」
小声で囁き、私は深くお辞儀をした。
距離もあるし、この声は聞こえてないと思う。
顔を上げてまた視線を交わす。
紺野さんは眼を見開いたまま、こちらを見ていた。
「また明日」
涙が込み上げてきて、私は踵を返した。