ひだまりHoney

勇気を振り絞って、一歩踏み出した。しかし、私の動きを察知し、希世さんも動き出す。

紺野さんの横に並ぶと、そっと彼の服を掴んだ。

掴まれた服に視線を落としてから、紺野さんは希世さんに何かを話し掛け顔を上げた。

紺野さんと目が合った。

組んでいた腕を解き、また希世さんに言葉をかけた彼を見て、私の足は止まってしまった。

これ以上行っては駄目な気がした。

希世さんの彼氏としての紺野さんを見せられる気がして、恐かった。

逃げ出したい。

「お疲れ様でした」

小声で囁き、私は深くお辞儀をした。

距離もあるし、この声は聞こえてないと思う。

顔を上げてまた視線を交わす。

紺野さんは眼を見開いたまま、こちらを見ていた。

「また明日」

涙が込み上げてきて、私は踵を返した。

< 299 / 447 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop