ひだまりHoney
球技場を出ることだけを必死に考えた。
俯いたまま小走りに進む途中、誰かにぶつかりそうになった。
飛び避け様に視線を上げ、あっと声を上げてしまった。
すぐに後悔するけれど、遅かった。
相手は私を見て、足を止めた。
「珠洲ちゃん」
会いたくなかった人に、会ってしまった。
「やっぱり。対戦相手の中にどこかで見た顔があると思ったら。珠洲ちゃんの弟いたよね?」
頭の奥が重くなった。
「勇弥くん」
「本当に、久しぶりだね」
再び歩き出そうとしたけれど、伸びてきた手が私の腕をがっちり掴んだ。
実に人の良さそうな笑みを浮かべ、私を見下ろしている。
背筋が震えた。