ひだまりHoney
「ごめんなさい。私、急いでるの」
「おいおいおい、逃げんなよ……ねぇ、久しぶりに食事でもしながら話そうよ」
胸倉を掴まれ、引き寄せられた。
くるくると声音が変わる。それも私の中の恐怖をかき立てる。
「止めて、離して! 貴方と話すことなんてない!」
「うるせえな。こっちは負けてムシャクシャしてんだ。余計イライラさせんなよ」
目の前にある顔は、柔和さの欠片もなかった。声が出なかった。
じろじろと私の顔を見た後、口の端が上がる。
「ちょっと付き合えよ」
「やっ!」
力一杯、抵抗したけれど、勇弥君の力には敵わなかった。
腕を振り払おうとすればするほど、その力は強まっていく。
競技場から外へ出れば、駅方面ではなく駐車場に向かって引きずられる。