ひだまりHoney
ぎっと車が重みで揺れ、唇が震えた。
肩に何かが触れ、寒気が走った。私は勢いよくそれを振り払った。
顔を上げて、愕然とする。
「……っ!」
振り払ったのは、紺野さんの手だった。
「平加戸」
戸惑いの顔をして私を見つめている。
左の口角から血が出ていて、躊躇いがちに引いた手の甲は赤く腫れていた。
優しいその手を、私は振り払ってしまった。
涙が溢れ落ちる。止まらない。
「こ……ご、めっ」
紺野さん、ごめんなさい。
ただそれだけの言葉なのに、うまく声が出てこなかった。
「わ、わるい。そうだよな……ちょっと落ち着こう。お互いに」
またゆっくりと手が伸びてくる。
私の意思を無視し、体がその手から逃げようとする。