ひだまりHoney
五章、
伝えたい
時間が流れていく。
「見積もり出来た?」
紺野さんの声を耳で拾いながら、表面上はいつもと変わらない日常を送る。
「招待状の原稿、チェック入れといたから、直して」
けれど、私は焦っていた。
「ナンバリング。絶対忘れないで」
もうすぐ、こんな風に声を聞くことも、その凜々しい姿を見ることも、同じ空間にいる幸福感を味わうことも出来なくなってしまうのだ。
「この前下見してきたろ? 会場レイアウト案、三つ作って」
今日は月曜日。今週末に、私の派遣期間は終わりを迎える。
自分で選んだ道。
それは分かっているけれども、寂しさで胸が潰れそうになる。
こんなこと、初めてだ。