ひだまりHoney
ちょっとくらい転んでも構わない。
階段の踊り場で脱いだパンプスを両手に持ち、半ば飛び降りるように駆け下りていく。
サッカーの練習試合があったあの日、私は気を失ってしまった。
気が付いたときは、もう朝だった。
自分のベッドの上で身を起こせば、もたれかかる格好で眠っている弟がいた。
まだ紺野さんのウインドブレーカーを身に着けたままけれど、持ち主の気配は家の中になかった。
弟を揺すり起こせば、日付が変わる頃まで紺野さんが私の傍にいてくれたことを知る。
それを聞いて、心が震えた。
紺野さんが私の傍にずっといてくれれば良いのにと、思った。
そして弟に促されるまま出勤準備を始め、引きずられながら電車に乗り、会社の前で手を振った。