ひだまりHoney
もう一度その温かさに触れたい。触れたくて仕方がない。
会社から駅に向かって進む紺野さんの背中を必死に追いかけた。
名前を呼びかけたかったけれど、苦しくて声を発することは出来なかった。
脇腹の痛みに耐えられなくなって、私は足を止めてしまった。
紺野さんの姿は変わらない速度で遠ざかっていく。
相手は歩いているというのに、なんで追いつけない。
追いつきたい! 絶対、追いついてやる!
そう気持ちを奮い立たせ、紺野さんの背中を視界に入れたとき、彼の足が止まった。
私は前に進もうとする。けれど、現れた黒い影にふわりと地面が揺れた。
「……希世さん」
紺野さんはまた歩き出した。その横に希世さんは嬉しそうに並ぶ。
私は唇を引き結んだ。