ひだまりHoney
そんなの無いと言われるのが、恐い。
「平加戸って、派遣金曜日までなんだよな?」
「はい。最後までしっかり働きますので、よろしくお願いします」
「あとちょっとか……俺もしっかりしなくちゃな」
優しく笑うその顔が、心の奥にほんわりとした熱を植え付ける。
「紺野さんは、私には頑張りすぎに見えますよ……では。お疲れ様でした」
名残惜しさを振り切るように頭を下げ、回れ右をする。
視界を移動させれば、すぐに美都里さんと目が合った。
「ねぇ、珠洲ちゃん。駅まで一緒に行こう」
「はい」
ノートパソコンをパタリと閉じ立ち上がった美都里さんの横に、私は急いで並ぶ。
「俺も帰ろうかな」
帰り支度をするべく廊下に出ようとした瞬間、疲れの滲んだ紺野さんの声が聞こえた。