ひだまりHoney

深呼吸を繰り返す。過呼吸にはなってない。大丈夫。

「はい。水」

ひやりと冷たい物が額に押し当てられた。ミネラルウォーターだった。

「冷たくて、気持ちいい」
「そう? 良かった」
「すみません。面倒ばかりかけて……でも、そのうち落ち着きますので、もう私は大丈夫です」
「面倒じゃない! そんな風に俺は珠洲のこと思ってない」

ちょっと口を尖らせ、紺野さんは私の横に腰掛けた。

フロアからぞろぞろと人が出てくる。

人の視線が気になって、私はペットボトルで目元を覆った。

「……人が少なくなるまで話そっか。うーん、何の話ししようかな」
「希世さん」

ミネラルウォーターを目に押しつけたまま、私はその名前を口にしていた。

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