ひだまりHoney
でも、ここで負けちゃいけない。
気持ちを立て直しつつ、一つ一つ自分の考えを言葉にする。
「……派遣期間も、もう少しで終わりです。だから、頂いたこのチャンスを逃したら、もうイベント運営に携わるような仕事をすることもないかもしれないし、折角ですから貴重な経験をさせて頂きたいなと」
食い入るように見つめてくる係長の視線に息苦しさを感じながら、私は深く頭を下げた。
「係長、お願いします」
「……平加戸さぁん」
泣きそうな声に嫌な予感を募らせつつ、私は顔を上げる。
係長は子供のように口を尖らせている。
「考え直してくれよぉ。ね? ね?」
気持ちの悪い猫なで声に、一気に肌が粟立っていく。