ひだまりHoney

呟きと共に、紺野さんの手が私を引き寄せた。

一瞬力が入ってしまった。

けれど、心地よい力強さと包み込む温かさが体に染みこんでくる。

徐々に私から無駄な力が抜けていく。

「珠洲を抱きしめると、すごくしっくりくるんだ」
「え?」
「このままこうしてると、溶け出しそうだ」

体を少しだけ離し、紺野さんが弱々しく笑った。

「他の女じゃ、そんなこと思ったことない……こう思える珠洲を、きっといつか俺は、抱くと思う」

顔を伏せるように、彼は私の肩に顔を埋めた。

「……抱きたい」

そっと腕に触れれば、震えているのが伝わってきた。

「でも、今の俺は中途半端だから……駄目なんだ」

意志が込められた声音に、それ以上、私は何の反応も出来なかった。


< 341 / 447 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop