ひだまりHoney
切ない雨
「引き止めてくれれば、良かったのに」
流れてくるお寿司のネタを目で追いながら、弟の凉太が不満げな顔をする。
「用事あるんだからしょうがないでしょ?」
甘エビの握りがのった皿を掴み取る私も、きっと不満げな顔をしているだろう。
「俺、相談……っつーか、お願いしたいことあったんだけど……姉ちゃん、紺野さんのアドレス教えてよ」
「紺野さんと凉太が、いくら知ってる仲だとしても、そういうの勝手に教えたりするの、好きじゃない」
ちょっとだけお醤油をたらし、頬張ばった。甘みが口の中に広がっていく。
今私は、きっと幸せそうな顔をしているに違いない。
「だったら紺野さんに、俺に教えて良いかメールしてよ」
流れてきたイクラの軍艦巻きを、凉太は目をきらきらさせながらゲットする。