ひだまりHoney
「弟の前に可愛いが抜けてる」
「可愛くない、ね」
ゆっくりと文字を打ち込んで送信ボタンを押した瞬間、三回に分けて送りつけてやればもっと邪魔が出来たのにと後悔した。
「送ったわよ」
「よし。じゃあ、アドレス教えて」
「はぁ!? まだ返事もらってない!」
「紺野さんが嫌だとか言うわけないじゃん。教えて」
「……駄目です」
「堅いなぁ」
店の入り口付近で若い女の子の声が上がる。
目を向ければ、小さなタオルで頭を拭いていた。
「雨、降ってきたみたい」
窓の外に目を向けてもガラスが曇っていて、よくわからなかった。
注文しようとタッチパネルを操作し始めた弟の指先を眺めていると、スマホが明るく光った。
メールだ。