ひだまりHoney
視界からいなくなった。
その現実に、私の中で何かが切れた。
「離してって言ってるでしょ! この酔っ払い!」
「うえっ!?」
「どうしてくれんのよ! 紺野さん行っちゃったじゃない!」
「こ、こんの? 俺の名前はこんのじゃねーよ?」
「どいてっ!」
力一杯、酔っ払いを突き飛ばした。
水たまりの上に、尻餅をつかせてしまった。
「つ、つめてぇなぁ」
「すみません」
平謝りをし、走り出した。
公園から飛び出し、右方向に目を向ける。
数メートルだけ進み……私は進むのを止めた。
息苦しさに胸元を抑えながら身を折れば、雨水を含み色の変わったパンプスと、泥で汚れたストッキングが見えた。
雨上がりのむっとした空気がさらに憂鬱さを増加させる。
紺野さんの姿は、もうなかった。