ひだまりHoney
息を深く吸い込んで、吐き出し……顔を上げる。
「私は紺野さんが好きです」
大きく見開かれた希世さんの瞳を、私はまっすぐ見つめ返した。
「紺野さんには同情の気持ちしかなくても」
一歩踏み出せば、希世さんの足が後退する。
「私は紺野さんが大好きです」
拳を握りしめ、また大きく息を吸い込んだ。
気持ちも足も、前へ進むために。
「細やかな気遣いにいつも救われてます。優しい声に気持ちが和みます。男女分け隔てなく接することが出来ることも、仕事に対する真摯さも、私は尊敬してます」
頭の中が真っ白だ。勝手に言葉が口から出てくる。
「最近の疲れ切った顔を見ていると、胸が痛みます。紺野さんに……好きな人に、あんな顔をさせちゃ駄目です」
通行人が私たちに目を止めたのが視界の隅に見えた。
声は震えているというのに、言葉は止められなかった。