ひだまりHoney
「別に良いじゃない」
心の波を落ち着かせようと、そんな言葉を口にする。
環境を変えることに、不安がなかった訳ではない。
変わらないのなら、これまで同様、あのタヌキ上司さえ警戒していればいいのだ。
大丈夫。
きっと、これで良かったんだ。
浅く息を吐いた瞬間、何かの気配を感じ、私は戸口へと視線を動かした。
「……うっ」
すぐさま、眉根が寄った。
上田係長が獲物を狙う動物のような表情で、出入り口に立っていたからだ。
「ねぇ、平加戸さん」
小刻みに震えながら伸びてきた手が、私を掴もうとする。
慌ててそれを避け、この緊急事態から逃れる方法を模索する。