ひだまりHoney
横に立っている紺野さんを見て、桃宮さんが両手を震わせる。コミカルだ。
「すみません。生ビールとカシスオレンジ、一つずつ」
紺野さんは革靴を脱ぎながら、通りかかった店員に声を掛けた。
「紺野さん、登場するの早くないっすか?」
ぽつりと呟いてから、松戸さんはポカンと口を開ける。
私もそう思った。他のみんなも同じだろう。驚いた顔をしている。
しかし、当の本人は軽く笑みを浮かべただけで、大田原さんの隣に腰を下ろした。
美都里さんから渡されたメニューを眺めている彼の顔を、私は真正面から眺めた。
「紺野さん」
ついその名前を呼べば、すぐにメニューから視線を上がる。ばちりと目が合った。
「珠洲も見る?」
「いえ、あの……何かスッキリした顔してませんか?」
「分かる?」