ひだまりHoney
「だから余計、就職してから仕事頑張らなくちゃって思うようになった。晃がこの会社を継ぐのなら、俺はその片腕になる。それが伯父さんへの恩返しで、晃への罪滅ぼしになると思った」
周りの雑音が遠ざかっていく。
彼の話を聞き漏らすまいと、私は重ねた手に力を込めた。
「希世は結構頑固だし別れ話も進まないから、時間がもったいないって感じてて、俺は希世との関係を後回しにして、仕事に没頭してた」
紺野さんが私を見た。
笑いかけてきたその顔は少しだけ寂しそうに見えた。
「珠洲が派遣されてきた頃さ、晃が珠洲のこと可愛いって言ったんだ」
「え!?」
「だから俺は、きっといつかあの子は晃のものになるんだろうなって思った。だから珠洲とはあまり接触しないようにしてた」
持っていたグラスをテーブルに置く。
コトリと響いたその音が、私の体の奥底を切なく震わせた。
「もちろん挨拶くらいはしてたよ? でもごめん。珠洲が俺を覚えてないのも無理ないと思う……みんなまとめて挨拶してたようなもんだから」